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「闇市から見た東京ー新宿を中心として」の報告

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2010年5月14日、東大駒場キャンパス内、8号館3階315教室で開かれたレクチャー・イベント「闇市から見た東京---新宿を中心として」の総論/サマリーを、発案者である逆井聡人氏から寄せてもらいました。

イベントは、小さな教室で収容人数も限られた会場でしたが、ほぼ満席となりました。従来から、SHA-kenのイベントに参加してくださっている方々、今回サイトを見てはじめて来てくださった方々もまじえ、アットホームな雰囲気で進行されました。(SHA-ken代表 高橋正明)


「闇市から見た東京ー新宿を中心として」

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なぜ今闇市を問うのか。
 近年の昭和30年代ブームには、戦後日本の成長物語の起点としてとらえる向きがある。そして、その前の昭和20年代は「敗戦直後の混乱の時代」として一括りにされることが多いように見受けられる。昭和20年代を「混乱」という言葉である種の「ブラックボックス」にしてしまうことによって、戦中/戦後という切断線つくり、昭和30年代を戦争から切り離して「新生日本」の第一章にしようという意識がそこにはあるのではないだろうか。
 闇市とはまさにその敗戦直後の「混乱」を象徴した事象として挙げられ、またいかがわしいものに溢れたケオティックな空間として認識されてきた。しかしその内実に関して、これまで十分な議論がなされてきたことがあっただろうか。闇市を見てみることで、戦中/戦後という切断線ではない、戦中--戦後という接続線を浮き彫りにすることができるのではないか。


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 今回の発表では闇市を「自然発生的」な現象として捉えるのではなく、戦中にそれが成立する条件が整っていたことを示した上で、敗戦直後の闇市を見てみた。特に注目したのは、闇市を取り巻く言説の変化についてだった。「光は新宿より」という創世記を思い起こすようなフレーズに導かれて都内の随所に成立した闇市は、当初政府や警察からも黙認され、メディアからも好意的に取り上げられていた。しかし、政治状況の変化に伴い次第に「不道徳の温床」として扱われるようになり、昭和25年前後にはほとんど姿を消してしまう。
 その過程を新宿付近の当時の写真や地図を通して見てみた。またそれらを現在のものと見比べてみることで、現在私たちが何気なく歩いている空間を相対化することを試みた。
 発表の後半では闇市を舞台にした文学や映画作品を紹介し、それらの作品の内部で闇市がどのように描かれていたかに注目した。特に織田作之助の「世相」や石川淳の「焼跡のイエス」などでは、闇市が戦中--戦後という繋がりの中で語られていることを示した。

 闇市から現在の東京を見てみることで、東京という都市が「無」から再出発したのではないということがわかる。昭和30年代の前には昭和20年代があり、その前には昭和10年代がある。一見自明なことが、言説として現れるとき、そこには何らかの歪みが生じている。「美しい思い出話」には回収されない事物を見ることが今だからこそ必要なのではないかと考える。(東京大学大学院博士課程 逆井聡人)

寄稿者プロフィール
逆井 聡人(さかさい・あきと)
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程。専門は近・現代日本文学および日本映画史。特に敗戦直後の文学・映画作品を主に研究している。 






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